2024 年 30 巻 p. 477-482
地域住民の避難開始行動を動力学の場に移し,累積避難開始人数の時間変化を運動として記述した武内・諸岡・山田9)の式を用い,非避難行動及び周囲の変状がもたらす影響に関する動力学的解釈を通じ,以下の知見を得た.1) 非避難行動は,単に避難率を低下させるだけでなく,多くの住民が避難開始し終えるまでの時間を延ばし,地域が本来持つ内在力に対しせん断力のような抵抗として作用する.2) 浸水等周囲の変状は,避難率及び避難開始人数速度を減じる抵抗のように作用する.3) 自らが避難しないことが,避難時に危険な状況に晒される住民を増加させ得る.4) 浸水等周囲の変状は,避難率を増加させる効果と減少させる影響を併せ持つことを踏まえ,氾濫の起こり方を制御し,危険状況の認識しやすさを保持しつつ,避難というソフトを実行しやすい環境をハードによって創出することも重要な視点である.