2026 年 32 巻 p. 145-150
河川における治水と生態系保全の両立には,流域スケールでの生物多様性の定量的把握が不可欠である.本研究では筑後川流域を対象に環境DNAによる広域魚類調査を行い,生息適地モデルにより生息ポテンシャルを推定した.41種中37種でAUCが0.7以上を示し,良好な精度が得られた.推定の結果,種数は中流域で最大となり,上流に向かって減少する傾向が確認された.また,筑後大堰および夜明ダム周辺で生息ポテンシャルの変化が見られたが,前者では過小評価の可能性,後者では地形および湛水域の影響が示唆された.機能群別では,氾濫原性魚類は中流域,河川性魚類は上流で高いなど異なる空間パターンが認められた.下流域では調査点の偏りによる過小評価の可能性は残るものの,本研究で得られた生息ポテンシャルマップは河川環境管理や保全計画に有用な基盤情報となる.