2022 年 14 巻 p. 158-163
本研究では,柔道選手が「積極的に前に出て相手を押し込んで試合を展開することの利点」と「握力発揮の影響」を明らかにするために,重心位置の相違や,握力発揮の有無を設定した条件下における単純全身反応時間を検証し,柔道のコーチングに活かすことを目的とした.結果は,以下に示すとおりである. 1.単純全身反応時間は,握力発揮の有無に関わらず,重心位置が前方,自然体,後方の順に速かった. 2.単純全身反応時間は,重心位置に関わらず,握力発揮なし時に比べ,握力発揮あり時には遅延した. 以上のことから,試合において積極的に前に出て相手を押し込むことや,組み手の工夫によって柔道衣の握り方に強弱を付けることは,より素早い反応による素早い技出しや防御動作が期待できるという点において,有利に試合を進めるための戦術となり得るものと考えられる.