抄録
本研究は,熟練度が異なる大学柔道選手を対象に内股を試技として関節角度の比較を実施し,それぞれの特徴から技術指導に対する実践的な示唆を得ることを目的とした.実験参加者は,大学男子柔道選手(Skilled10 名,Unskilled10 名)を対象に,柔道の内股を行い,その動作は光学式3 次元動作分析システムMac3D(250Hz)を用いて記録した.動作中の足に作用する地面反力は,フォースプレート(1000Hz)を用いて計測した.その結果,熟練度が高いSkilled の方が体幹傾斜角度の最大値は大きく,最大値が発生したタイミングは有意に早かった.また釣手の最大値は小さく,引手の最大値は大きい傾向が見られ,その結果として受を前方方向へ大きく引き出すことに繋がり,Skilled は効果的にテコを用いて払い上げている可能性が示唆された.以上のことから,内股の技術向上という点において,回転局面で釣手と引手を用いて受を大きく崩しておくことは,投げ局面で取が軸足のみの片足立ちであってもその姿勢を安定させることと,素早く受を払い上げることを可能にすると考えられた.