スポーツパフォーマンス研究
Online ISSN : 2187-1787
16 巻
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
  • 矢野 琢也, 賀屋 光晴, 長野 崇, 椿 武, 村田 和隆, 渡邊 和香, 鵤木 秀夫, 平川 和文
    2024 年 16 巻 p. 297-308
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/16
    ジャーナル フリー
    本研究は,兵庫県のスポーツタレント発掘事業(ひょうごジュニアスポーツアカデミー:以下HJSA)参加者を対象に新型コロナウイルスによる活動停止が運動能力に与える影響をあきらかにすることを目的とした.対象者は,選考会で選考され,身体能力開発・育成プログラムに参加した6 年生とした.2016 年度,2017 年度,2018 年度の3 年間をコロナ前とし,2020 年度と2022 年度の2 年間をコロナ影響下とした.2016 年度は,男子13 名,女子14 名,2017 年度は,男子13 名,女子15 名,2018年度は,男子8 名,女子13 名,2020 年度は,男子10 名,女子11 名,2022 年度は,男子13 名,女子11 名であった.測定項目として,体格に関して身長・体重の2 項目を行い,運動能力に関して20m 走,T 字ラン,4 方向リアクション(以下;4 方向RE),10 秒間ステッピング(以下;ST),垂直跳び,連続リバウンドジャンプ(以下;RJ 指数),ドロップジャンプ(以下;DJ 指数)を行った.結果,男女とも身長,体重はコロナ前とコロナ影響下で有意な差はみられなかった.運動能力では,男女共にT字ランで有意な低下がみられた.また男子では,4 方向RE,女子では20m 走でそれぞれ有意な低下がみられ,コロナ禍による運動能力への影響があきらかとなった.
  • 友定 啓仁, サトウ タツヤ, 笹塲 育子
    2024 年 16 巻 p. 286-296
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
    ジャーナル フリー
    運動部活動のようにスポーツを扱う集団において,勝利を追求する姿勢は否定されるものではない.しかし,近年スポーツ界では,過剰な勝利至上主義によりバーンアウトなど多くの心理的な問題が生じている.本研究では,A 大学ラグビー部68 名を対象に,心理的な課題を明らかにすることを目的として,心理的競技能力診断検査(DIPCA.3)を実施し,強化方策を検討した.学年とスコッドを独立変数とする多変量分散分析の結果,学年とスコッドの多重比較検定で有意差がみられた.この結果を元に一変量分散分析を行った結果、自信において学年の主効果のみ有意差がみられた.多重比較の結果,1- 3 回生間に有意差がみられ,学年が上がるごとに得点は低下していた.また,下位尺度について探索的因子分析を行った結果,第1 因子は「決定力因子」,第2 因子は「精神力因子」と名付けられた.さらに,因子スコアを従属変数とした2 要因分散分析の結果,「決定力因子」においてスコッドの主効果で有意傾向がみられ,上位チームが高得点を示していた.強化方策として,自信の得点が低かった3 回生の半数以上が所属する下位チームにおいて,より多くの達成体験の獲得を目的とした試合数増加が有効であると考えられた.また,決定力因子の向上についても,試合を通して向上する可能性が示唆された.
  • バレーボールのショートサーブの動作習得
    吉田 聡美, 竹田 唯史, 山本 敬三, 永谷 稔, 渡部 峻, 蓑内 豊
    2024 年 16 巻 p. 271-285
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/21
    ジャーナル フリー
    スポーツスキルを習得しようとする場合,一時的にパフォーマンスが低下したり,習得に困難な場合がある.本研究は,大学バレーボール部に所属する2 名(A,B)を対象に,バレーボールのショートサーブの習得に際して,ショートサーブとロングサーブを交互に行う学習(以下:コンペア学習)を4 回実施することで,短期間で動きの習得が有効なのかについて,バイオメカニクス的視点と心理的な視点から事例的に検討することを目的とした.バイオメカニクス的視点の動作習得については,A は「ひねる(骨盤に対する体幹の右回旋)」,B は「のけぞる(骨盤に対する体幹の伸展)」を事前と事後(1週間後),保持(3 週間後)で比較検討した.結果,事前と比較して事後,保持では明らかな変化が見られた.心理な視点では,スポーツ版自己調整学習尺度の「評価・内省」が向上する傾向が見られた.また,内省コメントから,「コンペア学習」を取り入れることで,打つ場所や力加減などの弁別が高まることがわかった.さらに,試合を想定した内省コメントが得られたらことから,コンペア学習は,より実践を想定した学習方法としても応用できる可能性があることが示唆された.
  • ブロックアウトを得意としていた大学女子バレーボールコーチの運動実践知の構造化
    坂中 美郷, 下川 美佳, 栫 ちか子, 田川 浩子, 沼田 薫樹, 濱田 幸二
    2024 年 16 巻 p. 261-270
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/14
    ジャーナル フリー
    本研究では,サイドラインの外に弾き出して得点するブロックアウトを得意としていた大学女子バレーボールコーチ(筆者)を対象に,「レフトプレーヤーは,レセプションを構えているときからスパイクを打つまでの間に,どのように状況判断をしてブロックアウトを選択しているのか」というリサーチ・クエスチョンをもとにして,インタビュー調査を実施し,対象者の持つ運動実践知の一端を明らかにすることを目的とした.その結果は以下のとおりである.対象者はレセプションを構えている局面では,それまでの試合の状況や相手ブロッカーの傾向といった主観的要素に選択的注意を向けている特徴がみられ,トスの質を確認する局面においては,「自身と相手チーム」,「自身と自チーム」,「自身とネットとボールの位置」というような客観的要素に選択的注意を向けている特徴がみられた.トスの質を確認する局面において収集する情報を,ブロックアウトを遂行する際の重要な判断材料としており,とくに「トスがアンテナ付近まで伸びているか」「ネットと自身の間にボールがあるか」を見極めてからブロックアウトを選択していた.
  • 動きを〈待つ〉という現象に関する発生運動学的考察
    山下 龍一郎, 森井 大樹
    2024 年 16 巻 p. 250-260
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/14
    ジャーナル フリー
    指導実践の現場では,指導者や選手の間で様々な指導言語が用いられる.本研究の対象となる〈待つ〉やその活用語を用いた指導言語が使用される場面は少なくないと言えよう.一方で,この言葉の意味する内容について伝え手と承け手との間に相互理解がうまく機能しないことや,効果的でないケースが存在すると考えられる.本研究おいては,待つという現象に関わる修正事例を取り上げ,この現象の意味内実について発生運動学的視点から分析を行った.ある動作のタイミングが早くなるという問題を〈待つ〉や〈我慢〉といった動感では解決できない場合が存在する.例えば,待ちたくても技術的に待てないという場合や,〈待つ〉ということ自体に技術的な難しさはないものの,その調整が難しく,危険な失敗と隣り合わせにあるという場合である.本研究において明らかになったことは,こうした問題の解決するためには,動作を行うのに適切な位置を狙うことのできるコツの発生が不可欠ということである.
  • 大学ラグビー選手を対象にして
    大石 徹, 千葉 剛, 中野 恵介
    2024 年 16 巻 p. 238-249
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/11/06
    ジャーナル フリー
    競技スポーツでは,様々な場面において発生する事象や選手自身の身体能力,適性を数値化・標準化するために,各種の測定・評価が行われている.そして,その評価に基づいて,チーム全体や選手個人の強化を図っている.本研究の目的は,これまで選手のセルフコンディショニングに活用されてきた「コンディション マネジメント モデル」を用いて,競技に向けた日常の意識・行動の評価をチーム分析やチームの課題解決など,チーム指導への有用性を検討することである.今回,コンディションマネジメントを評価する3 つの下位指標(強化,リカバリー,自己分析)の平均値をもとに作成したマトリクスシートを用いて,回答を4 分類した.その結果,これまで潜在化していたチーム全体の課題や問題点,指導対象を事例的に明らかにすることができ,また,数値化されたことで再評価も可能となり,競技に向けた日常の意識・行動に関するチーム指導への有用性を確認することができた.
  • 中馬 健太郎, 北辻 耕司, 水上 健一, 堀尾 郷介
    2024 年 16 巻 p. 229-237
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/10/03
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,CHU-Test パフォーマンスとサッカーの試合で行われる高強度加速回数および高強度減速回数との関係を検討することであった.対象者は,19.3 ± 0.9 歳の大学生男子サッカー選手16名であり,GPS デバイスを装着してCHU-Test およびサッカーの試合を行った.CHU-Test およびサッカーの試合で取得されたGPS データから,高強度加速(3m/s2 以上)および高強度減速(-3m/s2 以下)の回数を把握した.CHU-Test パフォーマンスは,17.9 ± 3.1 回であった.サッカーの試合で行われた高強度加速回数は51.6 ± 16.0 回,高強度減速回数は41.0 ± 12.0 回であった.CHU-Test パフォーマンスは,サッカーの試合で行われたフルタイムでの高強度加速回数との間にr=0.83,高強度減速回数との間に r=0.65 のそれぞれ有意な相関係数が確認された(p<0.05).また,CHU-Test パフォーマンスは,試合で高強度加速回数あるいは高強度減速回数が最も多かった5 分間(ピーク5 分間)で行われた高強度加速回数(r=0.74)および高強度減速回数(r=0.52),試合最後の15 分間(ラスト15 分間)で行われた高強度加速回数(r=0.82)との間にもそれぞれ有意な相関係数が確認された(p<0.05).これらの結果から,CHU-Test パフォーマンスはサッカーの試合で行われる高強度加速回数および高強度減速回数を反映することが明らかになった
  • 陸上短距離選手との比較から
    太田 和希, 前村 公彦, 谷川 聡
    2024 年 16 巻 p. 217-228
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/03
    ジャーナル フリー
    本研究は,野球選手と陸上短距離選手のトレッドミル上での走動作の比較を通して,野球選手の走動作におけるステップ変数,体幹および骨盤挙動の特徴について示すことを目的とした.大学野球選手10 名および陸上短距離選手10 名を対象に,トレッドミル上を速度8.0 m/s で走行した際の身体重心高,ステップ変数および体幹部のキネマティクス変数を比較した.その結果,野球群は陸上短距離群と比して遊脚期中の身体重心高が有意に低く,ステップ頻度が有意に高いという特徴が見られ,これらは走動作時における加減速や方向転換を有利に行うための野球選手の特徴であることを示すものとなった.一方,野球群に見られた接地時間が有意に長く,接地時の体幹捻転角度および立脚期中の体幹捻転量が有意に大きいという特徴は,陸上短距離群と比して高い疾走速度を獲得しにくい可能性を示唆するものであり,疾走速度を高めるためのトレーニング法の開発に繋がる知見となった
  • 八鍬 晶子, 森 裕紀, 並木 伸賢, 堀野 博幸
    2024 年 16 巻 p. 202-216
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/13
    ジャーナル フリー
    本研究では,サッカーにおける戦術トレーニングの方法と指導方法を事例として検討した.サッカーは,コート内で攻守が入り交り,そして時間的・空間的制限がある中,的確な状況判断をしながら正確な技術の発揮が必要であるが研究知見が少なく実証研究の蓄積が必要とされている.チーム戦術において,戦術を遂行する選手個人の戦術理解により,チームのパフォーマンスが向上するのではないかという仮説のもとチームコンセプトに則った守備トレーニングを3 か月間行った.本研究での守備トレーニングでは,チーム内の共通理解を促進するためのキーワードと個人の理解を確認するための理解度テストを用いて実施し,試合分析と理解度テストの結果から効果を検討した.その結果,試合分析からはチームコンセプトである守備戦術への効果が示唆された.また,試合結果に関しては勝ち点が加増するタイミングと理解度テストで理解が確認できたタイミングが同時期であった.このことから,チーム戦術に対する個人理解の深まりと状況判断の向上により,チームとして守備の共通認識が増したことが,試合における勝ち点の加増という結果につながったのではないかと推測された.
  • 髙橋 弥生, 前田 明
    2024 年 16 巻 p. 175-201
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/08
    ジャーナル フリー
    新体操の指導者は,演技を構成することが難しいと感じている.本研究は,新体操団体競技の演技構成を可視化するための記録および分析方法の構築を目的とした.先行研究を参考に筆者が独自に記録用紙を作成し,その記録用紙を用いて筆者を含む3 名の国際審判員が,39th FIG Rhythmic Gymnastics World Championships の団体種目別決勝のHoop5 において難度と芸術の得点が1 位であった1 演技の演技構成を記録した.その後,筆者が記録内容を可視化し記録内容の一致度を確認した結果,3 名の記録内容が96.8% 一致した.さらに筆者を除く記録者2 名にトライアンギュレーションを実施した結果,演技構成を記録および分析する方法の妥当性と汎用性が国際審判員によって認められた
  • 芝 純平, 山瀬 花
    2024 年 16 巻 p. 160-174
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー
    本研究は,2023 年7 月下旬~ 9 月下旬までの冷房機器のない体育館での環境温の変化,また2023 年 6 月~ 9 月の冷房機器のない体育館での大学女子バスケットボールの練習による熱中症の発生状況を調査することを目的とした.時期別の気温およびWBGT は7 月下旬から8 月中旬まで高い水準で変化がなく,8 月下旬から低下し始めた.湿度はそれとは反対で,7 月下旬から上昇し9 月中旬にピークに達し9 月下旬に大幅に低下した.加えて,7 月下旬から9 月中旬の最高気温は運動が原則中止のレベルを超えており,冷房機器のない体育館は熱中症の発生リスクが高い環境であることが明らかとなった.ポジション別の熱中症の発生件数はガード17 件,フォワード11 件,センター2 件であり,熱中症の発生にはポジションが関係している可能性が示唆された.また,バスケットボールは熱中症の発症リスクが高い競技であり,ゲーム中に水分摂取が行なえるタイミングが少ない.そのため,冷房機器が使用できない環境においては,練習計画の柔軟な変更および厳格に暑熱対策を行なう必要がある.
  • 鈴木 智晴, 森杉 亮太, 本嶋 良恵, 若松 朋也, 藤井 雅文, 前田 明
    2024 年 16 巻 p. 150-159
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/18
    ジャーナル フリー
    野球打撃において,バットの芯で正確にボールを捉えることは非常に重要であるが,打撃の正確性を向上させるトレーニング手段は不明である.そこで本研究は,芯部が着色されたバットで行う打撃練習が野球打撃の正確性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.男子大学野球選手を対象とし,トレーニング群(Tr 群)8 名,コントロール群(Con 群)8 名に区分した.トレーニングは,打撃投手から投じられるボールを打撃するものとし,Tr 群は芯部が着色されたバット使用し,Con 群は着色されていないバットを使用した.両群ともに,20 球× 2 セットを週に3 回,4 週間に渡って計12 回のトレーニングを行った.トレーニング前後で光学式3 次元動作解析システムを用いて打撃測定を行った.得られたデータから,インパクト位置(打撃の正確性),スイング速度,打球速度の分析を行った.その結果,Tr 群は打撃の正確性およびスイング速度が有意に向上した.一方,Con 群は打球速度のみ有意に向上した.以上の結果から,芯部を着色したバットを用いた打撃練習は,通常のバットを用いた打撃練習よりも打撃の正確性およびスイング速度を向上させることが示唆された.
  • 新たな身体知への気づきとスローイング技能の向上をねらいとして
    濱中 良, 飯干 明, 金高 宏文, 森 司朗, 井福 裕俊
    2024 年 16 巻 p. 135-149
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/06
    ジャーナル フリー
    ゴールボールは新たな身体知への気づきを促すことができる価値や特性を有していると考えられる.しかし,新たな身体知への気づきが実際のパフォーマンスの変化に現れているかどうかについては十分に検討されていない.また,初心者にとってゴールボールのスローイング技能の習得は難しく,段階的な練習やそのための教材の開発が必要である.本研究ではゴールボールにおけるスローイング技能に着目し,当該授業の単元内でも新たな身体知への気づきを促し,スローイング技能の向上を図ることが可能となるような教材の提案を目指す.そのために①筆者による探索的な教材の試行と②数名の被験者による試験的実践をもとに検討を行い,最終的な教材を提案することとした.また,教材の試作過程や試験的な実践から得られたゴールボールにおけるスローイング技能の向上に繋がる知見についても提示することとした.その結果,開発した教材は新たな身体知への気づきとゴールボールのスローイング技能の向上を促すことをねらいとして十分に活用できることが示された.また,正面に向かって真っ直ぐボールを狙うために手がかりとなる3 つの身体知を示すことができた.さらに授業等でより活用しやすいように改善した教材を提案することができた.今後は,授業等での実践を通じた教材の活用方法や教材を活用した実践研究について検討を進めたい.
  • 大学入学時から2021 年東京オリンピックの期間を対象として
    千葉 佳裕, 佐藤 拳太郎, 吉本 隆哉, 山中 亮, 高井 洋平
    2024 年 16 巻 p. 121-134
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,世界選手権およびオリンピックで男子4 × 400 m リレーの日本代表に選出された佐藤拳太郎選手を対象に,大学入学時から2021 年に開催された東京オリンピック出場までに行ってきたトレーニングと記録の変遷をまとめ,次世代の選手および指導者がトレーニングを計画するための基礎資料を提示することを目的とした.佐藤選手は,高校時から400 m 走を専門とする選手であり,レース全体にわたって走速度を維持するタイプであった.大学入学後は,前半から積極的に走速度を獲得するとともに,後半まで走速度を維持できる取り組みを中心に実施し,2015 年度に45.58 秒を記録した.それ以降,日本代表として世界選手権に出場するようになり,より前半から積極的な走速度の獲得がみられるようになった.しかしながら,後半に大きな失速がみられ,低調な記録が続いた.そのようなことから,2021 年度に400 m 走の前半で高い走速度を獲得・維持しつつも休息のイメージを持つレース展開に変容することで,記録更新の兆しがみられ,東京五輪出場を果たすことができた.そこで本研究では,2021 年度までの取り組みと記録との関連をまとめることで,今後の記録更新の糸口を探ることとした
  • 投球動作ギアFLECHA を用いて
    藤井 雅文, 平泉 誠悟, 鈴木 智晴
    2024 年 16 巻 p. 112-120
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    本研究は,高校時代にイップスを経験した大学野球選手1 名を対象に,投球練習ギアFLECHA を用いたトレーニングが投球パフォーマンスに与える効果を事例的に検討したものである.トレーニングは,FLECHA のスローを1 日20 投,週に4 回以上,3 カ月間実施した.また,トレーニング効果を最大限反映させるために,トレーニング期間の3 カ月間は硬式球の投球を禁止した.その結果,投球腕の軌道の改善や,体幹や上肢を使った“ しなり” 動作の獲得,踏込脚の“ つぶれ” 動作の解消により,投球速度(Tre 前98.2 ± 3.0 km/h → Tre 後119.2 ± 2.2 km/h),ボール回転数(Tre 前1216.8 ± 80.3 rpm → Tre 後1484.2 ± 93.6 rpm)ともに有意に向上した.一方,3 カ月間,硬式球を投球しなかった影響で,正確性については一時的に低下したが,通常の活動復帰後すぐに元通りの状態にもどった.以上のことから, FLECHA を用いたトレーニングは,本対象者のような高校時代にイップスを経験した大学野球選手の投球パフォーマンスを向上させる可能性があることが示唆された.
  • 小嶺 里佳, 杉山 敬
    2024 年 16 巻 p. 106-111
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,新体力テストの一つであるソフトボール投げにおいて,任意の発声および異なる母音での発声が遠投距離に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした.被検者は野球またはソフトボールを競技として経験したことのある男子大学生10 名とした.発声することが遠投距離に及ぼす効果を検証するため,発声無条件および任意の発声有条件,そして異なる母音(あ・い・う・え・お)を発する条件にて,遠投を実施した.測定は各条件で各2 球ランダムに実施した.評価はボールの遠投距離とした.また,遠投後には,被検者の内省を取得した.実施方法は,新体力に準じて行い,ソフトボールの3 号球を使用した.その結果,任意の発声は発声無および母音「う」「お」より遠投距離が向上したが,発声無と母音間に有意な差は認められなかった.全被検者が発声の効果を実感する一方,母音に気がとられる者もいた.以上のことから,ソフトボールを投げる際,任意の発声を行うことにより,遠投距離は向上することが明らかとなった.一方,指定した母音を発する場合,発声自体に意識が集中することで,発声による効果を得られない可能性が示唆された.
  • 萱 和磨, 内藤 久士, 宮本 直和, 原田 睦巳, 冨田 洋之
    2024 年 16 巻 p. 92-105
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/22
    ジャーナル フリー
    電子付録
    本研究では,エリート体操選手が「カッシーナ」を試合で実施するまでの練習過程の事例を詳細に記し,有効な意識を探ることを目的とした.準備局面の車輪に意識を置いて練習することが「カッシーナ」でバーキャッチする上で重要であることが明らかとなった.特に,「加速準備局面において身体全体を一直線にして足先を遠くへ通す」意識および「宙返り準備局面において外方向に“ ぬき” をする」意識が重要であると考えられる.
  • 鈴木 智晴, 前田 明
    2024 年 16 巻 p. 80-91
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/29
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本代表に選出され,過去にシーズン最高盗塁阻止率を記録したことのあるプロ野球捕手の二塁送球動作の特徴を明らかにしようとした.その選手の特徴として遠投の飛距離(肩の強さ)はプロとして突出していないものの,動作の速さが高い盗塁阻止率につながっていると評されている.この捕手と他プロ野球捕手3 名の二塁送球動作の比較・検討を行った.二塁送球の測定には,光学式3 次元動作解析システムとフォースプレートを用いた.動作局面を3 つに細分化し,各局面に要した時間,送球速度およびキネマティクスを分析した.その結果,日本代表に選出された捕手は捕球からリリースまでの動作時間に要した時間が最も短かった.特に,捕球してから軸脚が接地するまでに要した時間が他3 名の捕手よりも短かった.さらに,捕球時の身体重心速度において日本代表捕手が最も高い値を示した.以上のことから,日本代表に選出された捕手は,捕球する前から重心移動速度を高めることにより,捕球してから軸脚が接地するまでの時間を短縮し,動作時間を短縮することで素早い二塁送球動作を行っていることが示唆された.
  • 濵口 和人, 田中 光, 小澤 雄二, 鈴木 智晴, 出口 達也, 前田 明
    2024 年 16 巻 p. 72-79
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,回転ボックスジャンプトレーニングが大学柔道選手における内股の動作時間に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.実験参加者は,大学柔道選手18 名であり,回転ボックスジャンプトレーニング群(以下,「RBJ 群」)6 名,ボックスジャンプトレーニング群(以下,「BJ 群」)6 名,トレーニングを行わない群(以下,「CON 群」)6 名に区分した.畳の上にプライオボックス(NISHI 社製)を置き,RBJ 群,BJ 群ともに,それぞれのトレーニングを10 回× 3 セット行った.RBJ 群には,ボックスの上に乗る時の腰の回転させる方向を,通常の練習で内股を施す時と同じ方向とし,ボックスの上から畳に降りる時は,上に乗る時の方向を戻るよう教示した.トレーニングは,週3 日,4 週間,計12回実施した.その結果,RBJ 群のトレーニングによって,崩しから作りの局面までの動作時間が短くなった.またリバウンドジャンプ指数は有意に向上した.これらのことから回転ボックスジャンプトレーニングは,大学柔道選手のSSC の能力を向上させ,内股の動作時間を短縮する可能性が考えられた.
  • 鉄棒から遠く離れていくような実施を行う大学生体操選手を対象に
    中谷 太希
    2024 年 16 巻 p. 49-71
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/07
    ジャーナル フリー
    本研究では,男子体操競技における鉄棒の終末技が未熟な大学生体操選手を対象に,鉄棒から遠く離れていくような実施の原因を把握し,その課題を解決した修正事例を示すことを目的とした.対象者は筆者が指導する大学生体操選手4 名であり,鉄棒から遠く離れていくような実施を行っていた.筆者が考案した練習方法を実施させた結果,対象者4 名は鉄棒から遠く離れていくような実施ではなくなり,試合において修正した実施を行うことができた.そして,今後指導する際のもととなる修正指導の流れと注意すべき点を示すことができた.
  • - 伴走者に焦点を当てて -
    平井 達雄, 前田 博子, 竹下 俊一
    2024 年 16 巻 p. 36-48
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/12
    ジャーナル フリー
    これまで視覚障がい者ランナー(B ランナー)の伴走者についての研究では,参加動機には他者の勧め(鈴木,2012)や依頼(星野,2008)という外発的なものがあると報告されている.活動実態としては,B ランナーと伴走者が所属するクラブが数多く存在し,定期的な練習会が開催されている.筆者らは,B ランナー側から伴走者とのマッチングにおける課題を検討してきた(平井.2020).そこで,本研究では,伴走者側から同様の課題を明らかにすることを目的とした.研究方法は,A 伴走クラブに所属する伴走者5 名に半構造化インタビューを行い,得られた音声データを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによって分析した.その結果,以下の4 点が明らかとなった.① B ランナーは伴走者への質的な関わりを課題としていたが,伴走者は量的な面をあげ,より積極的にB ランナーにアプローチしていくことが重要と捉えていた.②双方ともに適当な相手を見つける力を養成することが求められ,そのためには人脈を広げることが必要とされた.③自主マッチングでは,走る目的の一致したパートナーを見つけることが課題とされた.しかし,双方とも,多少,目的が異なっていても一緒に走ることは可能としていた.④伴走者は日常の練習におけるマッチングについて,積極的かつ日常的に連絡を取り合うことが重要としており,この点もB ランナーと共通した認識を持っていた
  • 競泳選手を対象として
    工藤 慈士, 草薙 健太, 杉山 佳生
    2024 年 16 巻 p. 26-35
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,社会情勢による長期間の活動制限下において競泳選手の心理的特性ならびに競技レベル別での心理的スキルの差異を検討することを目的とした.対象者の選定は大学競泳選手118 名ならびに大学院生を含む社会人競泳選手14 名とし,社会情勢による長期間の活動自粛前に日頃からトレーニングを積んでいる者を対象とした.対象者に対して基本属性,心理的パフォーマンスSE,DIPCA.3,自己信頼度尺度の回答を求め,性別および競技レベル別での比較を検討した.回収した回答を集計しt検定,一元配置分散分析を実施した.その結果,男女間でリラックス能力と自信は男性の方が高い得点を示していることが明らかになった.また,国際大会,全国大会,地方大会出場の3 群に分類した一元配置分散分析を実施したところ,自己コントロール能力SE では,国際大会と地方大会で有意な差が認められ,作戦能力SE と精神の安定・集中で有意な差が認められ,いずれも国際大会が高かった.以上の結果から,社会情勢の影響によるスポーツ活動制限は男女ならびに競技レベルで心理的スキルが異なる傾向が示唆された
  • 中谷 敏昭, 金子 竜大
    2024 年 16 巻 p. 18-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    体幹の回旋動作はパフォーマンス発揮に重要な役割を担い,バットやラケットのスイング,投球動作における体幹と上肢の運動連鎖に重要である.本研究では,スマートフォンと追加インストールしたアプリケーション(Angle Meter)を用いて,体幹自動回旋可動域測定の信頼性と胸腰部柔軟性との関係を検討した.対象者は健康な男子学生60 名であった.体幹回旋の可動域(ROM)は,椅座位姿勢で左右に自動回旋させた際の角度をAngle Meter で測定した.信頼性は7 日の間隔をおいて2 回測定し,有意差と級内相関係数,系統誤差を検証した.胸腰部の側屈はAngle Meter を用いて左右の角度を計測し,屈曲は長座体前屈,伸展は伏臥上体そらしの距離を測定した.その結果,椅座位での体幹回旋ROM 測定の再テスト結果に有意差はなく,級内相関係数も0.881 と良好であった.加算および比例誤差も認められなかった.このことから,Angle Meter を用いた椅座位における体幹回旋ROM 測定は有用なテストである.また,体幹回旋ROM と胸腰部屈曲は弱い相関関係を示したが,側屈と伸展に相関関係はなかった.以上のことから,椅座位におけるAngle Meter を用いた体幹自動回旋ROM 測定は有用なテストであり,胸腰部柔軟性との関係は限定的であった.
  • 熟練度の動作比較
    濵口 和人, 古川 巧, 出口 達也
    2024 年 16 巻 p. 10-17
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,熟練度が異なる大学柔道選手を対象に内股を試技として関節角度の比較を実施し,それぞれの特徴から技術指導に対する実践的な示唆を得ることを目的とした.実験参加者は,大学男子柔道選手(Skilled10 名,Unskilled10 名)を対象に,柔道の内股を行い,その動作は光学式3 次元動作分析システムMac3D(250Hz)を用いて記録した.動作中の足に作用する地面反力は,フォースプレート(1000Hz)を用いて計測した.その結果,熟練度が高いSkilled の方が体幹傾斜角度の最大値は大きく,最大値が発生したタイミングは有意に早かった.また釣手の最大値は小さく,引手の最大値は大きい傾向が見られ,その結果として受を前方方向へ大きく引き出すことに繋がり,Skilled は効果的にテコを用いて払い上げている可能性が示唆された.以上のことから,内股の技術向上という点において,回転局面で釣手と引手を用いて受を大きく崩しておくことは,投げ局面で取が軸足のみの片足立ちであってもその姿勢を安定させることと,素早く受を払い上げることを可能にすると考えられた.
  • 髙橋 仁大, 中村 和樹, 岡村 修平, 大澤 啓亮, 柏木 涼吾, 村上 俊祐
    2024 年 16 巻 p. 1-9
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/01/12
    ジャーナル フリー
    本研究はテニスの女子ダブルスにおける地方学生選手の課題を探るため,得失点の状況と最終ショットに注目したゲームパフォーマンス分析を行い,ゲームの様相を明らかにすることを目的とした.対象とした試合は世界ツアー大会,全日本学生大会,地方学生大会の3 つのカテゴリーから各10 試合,計30 試合であり,全ての試合は3 セットマッチで,ハードコートで行われたものとした.収集した各映像をSPLYZA Teams((株)SPLYZA)を用いてタグ付けし,得点率,ラリー回数の出現頻度,最終ショットの割合,ネットプレーで終わったポイントでの最終ショット打球者の割合について算出した.分析の結果,1st サーブではサーバーの得点の割合が大きく,中でも世界ツアーではリターンでポイントが終わった割合が他のカテゴリーよりも大きくなっていた.また地方学生においては最終ショットがネットプレーであった割合が他のカテゴリーよりも小さくなっていた.最終ショットがネットプレーであったポイントでは,サーバーとレシーバーそれぞれのパートナーが最終打球者となる割合が大きかった.これらの結果から,地方学生においてはサーブ,リターンならびにパートナーのポジションにおける役割としてのネットプレーに課題があると考えられた.
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