2024 年 16 巻 p. 271-285
スポーツスキルを習得しようとする場合,一時的にパフォーマンスが低下したり,習得に困難な場合がある.本研究は,大学バレーボール部に所属する2 名(A,B)を対象に,バレーボールのショートサーブの習得に際して,ショートサーブとロングサーブを交互に行う学習(以下:コンペア学習)を4 回実施することで,短期間で動きの習得が有効なのかについて,バイオメカニクス的視点と心理的な視点から事例的に検討することを目的とした.バイオメカニクス的視点の動作習得については,A は「ひねる(骨盤に対する体幹の右回旋)」,B は「のけぞる(骨盤に対する体幹の伸展)」を事前と事後(1週間後),保持(3 週間後)で比較検討した.結果,事前と比較して事後,保持では明らかな変化が見られた.心理な視点では,スポーツ版自己調整学習尺度の「評価・内省」が向上する傾向が見られた.また,内省コメントから,「コンペア学習」を取り入れることで,打つ場所や力加減などの弁別が高まることがわかった.さらに,試合を想定した内省コメントが得られたらことから,コンペア学習は,より実践を想定した学習方法としても応用できる可能性があることが示唆された.