2024 年 16 巻 p. 261-270
本研究では,サイドラインの外に弾き出して得点するブロックアウトを得意としていた大学女子バレーボールコーチ(筆者)を対象に,「レフトプレーヤーは,レセプションを構えているときからスパイクを打つまでの間に,どのように状況判断をしてブロックアウトを選択しているのか」というリサーチ・クエスチョンをもとにして,インタビュー調査を実施し,対象者の持つ運動実践知の一端を明らかにすることを目的とした.その結果は以下のとおりである.対象者はレセプションを構えている局面では,それまでの試合の状況や相手ブロッカーの傾向といった主観的要素に選択的注意を向けている特徴がみられ,トスの質を確認する局面においては,「自身と相手チーム」,「自身と自チーム」,「自身とネットとボールの位置」というような客観的要素に選択的注意を向けている特徴がみられた.トスの質を確認する局面において収集する情報を,ブロックアウトを遂行する際の重要な判断材料としており,とくに「トスがアンテナ付近まで伸びているか」「ネットと自身の間にボールがあるか」を見極めてからブロックアウトを選択していた.