抄録
本研究は柔道選手における前腕筋群へのアイシングが,組み手時の相手柔道衣への把持時間に与える影響を検証することを目的とした.大学生女子柔道選手7 名(年齢:20.0 ± 1.2 歳,競技歴:12.3 ± 2.5年)を対象とし,前腕筋群の疲労を惹起させる課題運動と,実際の試合を想定した視覚障害者柔道ルールによる模擬試合を5 分間の休息を挟み行わせた.休息間に前腕筋群をアイスバスに浸すアイシング条件と,座位のみの安静条件の2 条件間で,模擬試合での引手側が切られた際の「始め」から「待て」までの柔道衣把持時間と,引手側が切られた回数を比較した.その結果,アイシング条件の柔道衣把持時間は安静条件よりも有意に長く(アイシング条件:18.8 ± 6.2 秒,安静条件:13.9 ± 3.9 秒),引手を切られた回数(アイシング条件:11.0 ± 2.6 回,安静条件:16.0 ± 5.4 回)も減少していた.これらの結果から,実際の柔道競技大会においても試合間に行う前腕筋群へのアイシングは,前腕筋群の疲労に対するリカバリー法として有効であり,試合時における組み手時の把持筋持久力低下を防げる可能性が示唆された.