抄録
体操競技のターン技に関する研究知見や指導書は今から30 年以上前のものが多い. 30 年前と現在ではルールや技が大きく異なり,それに伴って技術や捌き方も変化している.そこで本研究では,平均台種目のしゃがみ立ち3 回ターンに関して,習熟者における動感の実践知を明らかにすることを目的とする.対象者は2021 年東京オリンピック日本代表選手1 名とし,聞き手2 名によるインタビュー調査を行った.インタビュー調査の結果,対象者の当該技の動感の構造が明らかとなり,腕の振り動作が技の成否を左右していると推察された.なお,対象者は軸を崩さないために腕の振り全般の動作を最大限の大きさやスピードで行わず,浮脚の振りも使って回転力創発を補っていたことが明らかになった.