スポーツパフォーマンス研究
Online ISSN : 2187-1787
登山熟練者の昇段動作:
未熟練者との比較からみた技術検討
東山 昌央
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電子付録

2025 年 17 巻 p. 48-58

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抄録
本研究の目的は,登山熟練者と未熟練者の階段における昇段動作の違いを明らかにすることであった.そこで,男性登山ガイド1 名(熟練者)と,登山経験の少ない男性1 名(未熟練者)を対象に階段歩行実験を実施し,動作分析法により両者の違いを分析した.1)熟練者は未熟練者と比較して,股関節の伸展範囲が大きいことが確認された.また,重心の挙上時に,伸張- 短縮サイクル運動により,重心を効率よく挙上している可能性が確認された.2)熟練者は,足部接地後に,身体重心速度が抑制される局面がみられた.歩行動作のなかに筋の緊張を解く局面を設けることで,筋疲労の蓄積を効率よく抑制している可能性が考えられる.3)熟練者は,足部離地時における足関節の底屈動作が小さいことが確認された.これにより,転倒につながる蹴り出し動作を抑制し,安定性の高い動作を実現していると考えられる.以上,熟練者は,股関節の伸展,および伸張- 短縮サイクルの活用により,効率よく昇段動作を行っていること,動作のなかに筋疲労の蓄積を抑制する停止局面を設けていること,蹴り出し動作を抑制した安定性の高い動作を実現していることが可能性として考えられる.
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© 2025 日本スポーツパフォーマンス学会
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