抄録
ラマダン期間中のパキスタン柔道家に対して,柔道コーチングを行う機会を得たため,今後の柔道コーチングの一助に向けて報告する.ラマダンによる集中力低下に対しては,指導者が気を配り,通常期の稽古に対して,稽古内容の改善などが必要であると考えられた.柔道発展途上であるパキスタンであり,現場での指導者不足の影響で,柔道の基本指導が十分になされてない状況がみうけられたため,柔道の背景から礼法や受身等の指導を行った.さらに,畳などの柔道用品不足による外傷発生リスクの高い環境で稽古に取り組んでおり,外傷予防に向けた安全指導にも取り組んだ.技術指導では組手や技に関して積極的に質問され,日本の技術を積極的に取り込もうとする姿勢が伺えた.環境が改善され,技術に貪欲なパキスタン柔道の振興を期待し,報告を終える.