抄録
本研究では,柔道競技におけるスポーツパフォーマンス向上に貢献するために,試合において発現する「かけひき行動」の頻度と傾向について探索的に検討した.研究対象は,2024 年度に実施された全日本柔道選抜体重別柔道選手権大会の全ての試合とした.分析にあたり,先行研究を踏まえて,共同研究者との協議を通して2 局面における9 つの行動を分析枠組みとして設定した.分析の結果,相手と組んでいない時は,「組み付く」が最も多く278 回(31.4%)であった.組み合った後では,「振り解く・組手を切る」394 回(41.6%)で最も多かった.男女別で整理したところ,「弾く」,「ずらす・釣手を押さえる」,「振り解く・組手を切る」が男子において有意に多く,「組み付く」と「かわす」,「突っ張る・押さえる」が女子において有意に多かった.また階級間で比較したところ,軽量級ほど相手と距離をとるための行動が多く,重量級ほど組んだ後で自分の体勢を優位にしようとする行動が多かった.本研究を通して,試合における「かけひき行動」特徴を明らかにできた.加えて,男女や階級間のパフォーマンス構造の同異を明確にすることができた.