抄録
本研究は,筆者の過去7 年分の登山内容および,ランニングを加味した登山のための体力的な準備状況の変化を報告することで,3000 m 級の高山登山に向けた事前トレーニングのヒントを得ることを目的とした.対象者は筆者1名とし,GPS 付の腕時計で計測していた距離や速度,登下降距離により,ポイントを算出して登山の準備度とした.その結果,日常的な登山状況は,頻度が1.4 回/月,登下降距離が850 m /月であり,ランニングでのポイントを加えても,高山に行くには不十分であると考えられた.一方,高山登山を意識した準備期は,登下降距離が1294 m /月と不足していたが,ランニングでのポイントを加えると2 ヶ月で6129 ポイントと設定ポイントに達していた.そして,その後に実施した3000 m 級の高山の縦走登山においても,疲労も軽微でトラブルなく踏破することができていた.これらのことから筆者の場合,ポイント獲得を意識した準備トレーニング活動を約2 ヶ月間実施すれば,高山に行くための体力的な準備ができると考えられた.また,登山とランニングを併用したポイント制案を活用することで,地理的な問題や時間確保が難しいなどの理由で十分な事前登山ができない人にとっても,自分の体力的準備度を把握しやすくなると考えられた.