抄録
本研究は,ラグビーユニオンにおいて得点と失点に寄与する要因の構造的な違いを明らかにすることを目的とした.RWC2023 のゲームスタッツを用いて,チームの攻撃及び守備の成果に影響を与える主要なパフォーマンス指標(KPI)を明らかにするため,重回帰分析を実施した.その結果,得点モデルでは,「前進距離(Metres Carried)」,「ラインアウト成功率(Lineout Success)が得点に正の影響を与え,「反則数(Penalties Conceded)」と「キャリー数(Carries)」は負の影響を示した.一方,失点モデルでは,「タックルミス(Missed Tackles)」が失点を増加させ,「プレー中のキック数(Kicks in Play)」と「ラインアウト成功率(Lineout Success)」は失点を抑える方向に寄与した.特にラインアウト成功率は両モデルで有意な変数であり,セットプレーの重要性は,得点機会を増やすだけでなく,失点抑制にも影響することが示唆された.これらの結果は,得点と失点が部分的に異なる要因によって規定されており,戦術設計やコーチングにおいて攻撃と守備を分けて最適化する必要性がそれぞれの専門性を高める上で重要であることを示唆している.