2018 年 40 巻 1 号 p. 22-31
本研究では,高齢期における主観的幸福感の個人内変化を分析した.PGCモラールスケールを主観的幸福感の指標とし,全国高齢者パネル調査の9年間4時点(第1波調査時点で2,169人;年齢範囲60〜94歳)のデータを用いた.欠損値を推定し,潜在成長曲線モデルを行った結果,主観的幸福感は変化せず,安定していることが示された.個人内変化の個人間差に関連する要因を探索した結果,第1波調査時点の年齢が高いほど,主観的幸福感の初期値は低い一方,主観的幸福感は向上した.死亡者を含む脱落者は調査への継続者に比べ主観的幸福感の初期値が低かった.これらの結果,高齢期における主観的幸福感の安定性が再現され,縦断データには適切な欠損値の対処法を適用すべきであることが示された.今後,追跡期間を延長し,調査時点を増やすとともに,潜在的な共変量を考慮することで,主観的幸福感の軌跡とその共変量をより詳細に記述すべきだろう.