キルケゴールは、人間に自己を変化させるのは想像力の働きだと解している。本論文が試みるのは、想像力概念に注目して、キルケゴールの人間理解を再構成することである。
前半部では、アーネ・グロンの研究を参照しながら、キルケゴールの想像力理解について概観し、後半部では、想像の内に立ち現れるキリストの像と人間の関わりについて、またキルケゴールが理想的なキリスト教徒の「像」を描くことを自らの著作活動の主要な課題としていたことについて見る。
最後に、キルケゴールが人間を神の像を参照しながら理解していたことと、にもかかわらず神学的人間本性論の限界を認識していたことを確認した後、キルケゴール思想における想像力と信仰の関係について若干の考察を行う。