本稿では、近年移民第二世代や改宗者など米国に育った若者世代のムスリムを中心に支持を広げている、「伝統イスラーム」と呼ばれるスーフィズムの新たな潮流に注目し、その活動拠点となっているスーフィー・コミュニティにおけるムスリムの交流という観点から、宗教における接触/非接触の問題を論じた。これらのコミュニティは、モスクとは別に、多様なムスリムが集まり交流できる場を掲げており、その性格を捉えてしばしばサードプレイスと呼ばれている。本稿では、その一つであるタアリーフ・コレクティヴを事例に取り上げ、その活動や空間の分析から、この団体が自らを、モスクを補完する場として位置づけることで、主流派のコミュニティとの共存を図りながら活動領域を広げてきたことを明らかにした。そのうえで、コロナ禍を契機に、この団体がよりスーフィー色の強いコミュニティへと変化しつつあること、またそれがムスリムの交流の在り方にも今後影響を与えうる可能性を論じた。