2022 年 96 巻 2 号 p. 55-78
身体と心をつなぎ癒し効果も期待できる「接触」は、宗教やスピリチュアルケアにおいて重要な役割を担ってきた。しかし日本においてスピリチュアルケアを担う臨床宗教師とスピリチュアルケア師では、医療的・心理的・倫理的リスクから接触を制限している。それは信仰を前提とした与えられる宗教的ケアから、ラポールを重視しケア対象者を支えるケアへと質的に変化をもたらした。またスピリチュアルケアは、標準的な技法を持たずケア提供者の人格に依拠しているため個性的かつ自由なケアが可能となる。この特長を生かしケア対象者とケア提供者の安全を保障するため「接触」制限を含む「枠」を設定している。しかしながら宗教的ケアからの伝統があり効果的でもある「接触」を封印することに抵抗を覚えるケア提供者もある。安易に接触に頼らず、リスクとケアの間でどう折合いをつけていけばよいだろうか。これはケア提供者とケア対象者だけの問題ではなく、日本社会がいかなるスピリチュアルケアを求め、許容するのかについてのコンセンサスに関わる問題でもある。