2020 年 10 巻 3 号 p. 109-121
カラーコンタクトレンズは, 色素の露出や色素による表面の粗さについて問題視されているが, Z-stack法を除き, 効果的な色素の深さ測定法が確立されていない. 本研究の目的は, 存在の深さを高分解能に測定する定量分析法を提案することである. この目的のため, 電子顕微鏡を用いて, カラーコンタクトレンズ中の色素の深度分布を解析する方法を検討した. 本研究では, レンズ表面から色素までを測長するために, 包埋樹脂中におけるコンタクトレンズの表面の可視化法を検討した. その結果, 切り出したカラーコンタクトレンズを凍結乾燥してから, 表面に白金/パラジウムをスパッタコーティングすることで境界を明瞭に観察できることがわかった. STEMで測定した結果をZ-stack法で測定した値と比較したところ相関関係を認め, この前処理方法がレンズの厚さに及ぼす影響はZ-stack法の分解能以下であった. 色素深度を分析したところ, 検討で使用した試料では, 表面から色素までの距離が36.9nm~18.7μmであった. 電子顕微鏡観察に必要な前処理を行い分析することでmmオーダーからnmオーダーの測定が可能となり, 従来の深度の定量分析法では分析できなかった100nm未満の分布も測定が可能である. この方法は, 製品の品質と健康被害の因果関係を明らかとする, 有力な評価法となると考えている.