2020 年 10 巻 3 号 p. 169-174
承認申請に際してCDISC標準に準拠したデータの提出を日本と米国の規制当局が義務づけた. このことが製薬業界に大きな影響を与えている. 世界共通の臨床試験データ標準であるCDISC標準は我々に大きな恩恵をもたらすはずである. つまり, ①再利用を可能にする力, ②相互利用を可能にする力, ③異なる試験のデータを併合し単独の試験では得られない知見を得る力である. しかしながら, 現時点において製薬業界はこれらの恩恵を完全には享受できていない. その大きな理由は, CDISC標準に準拠していなかった臨床試験データをCDISC標準に準拠するデータに変換する仕事に追われていることである. 我々は承認申請直前のデータ変換から脱却し, CDISC標準の完全な実装を急ぐべきである. 我々がPMDAに期待することは, 提出され蓄積されるデータをもつこととなったPMDAだからこそできるレギュラトリーサイエンス研究をたくさん行っていただくこと, そのフィードバックを医薬品を開発しようとする企業や研究者に与え続けていただくこと, 世界中に有用な情報を発信し続けていただくことである.