2021 年 11 巻 2 号 p. 145-152
製薬企業において薬剤師・薬学部出身者が担う法的役割として, 総括製造販売責任者というものがある. 総括製造販売責任者の設置は, 医薬品, 医療機器等の品質, 有効性及び安全性の確保等に関する法律に基づき, 医薬品等を製造販売する業者がその許可 (製造販売業) を取得するための許可要件の1つとなっている. 医薬品の総括製造販売責任者は, 市場における製品の品質管理および製造販売後安全管理の総括的な責任を有する役割であり, その資格要件は, 医薬品の場合一部のものを除いて現時点で薬剤師であることに加え, 製造販売業に係る薬事業務, 開発業務, 品質管理業務または安全確保業務に3年以上の従事経験 (第一種医薬品製造販売業) を有すること, さらに薬事法規, 製品の特性, 原材料の調達から製品の市場への出荷に至る業務プロセス, 製造方法および製造管理, 品質管理業務並びに安全確保業務に関する総合的な理解力および適正な判断力を有することが求められている. 製薬企業の総括製造販売責任者として業務に従事する上で日々考えていることは, 製品の品質・有効性および安全性への影響, レギュラトリーコンプライアンス, 連携・コミュニケーション, タイムリーな判断と措置の実施など多岐にわたっている. 本稿では, 具体的な事例を交えながら, レギュラトリーサイエンスを含め総括製造販売責任者に求められる事項について, 自身の考えを交えて共有したい.