2021 年 11 巻 2 号 p. 93-110
対象疾患が重篤であり有効な治療選択肢がない場合には, 治療法の患者アクセスの遅れは甚大な患者リスクにつながることになる. このような状況をふまえ, 再生医療等製品や医薬品等について, 安全性が確認され臨床効果を推定できれば市販後に有効性の検証などを課す条件付きの承認制度が構築されている. これらの条件付きの承認制度では, 市販後に一定の有効性評価等を課すことで患者アクセスの迅速化を図っているが, 市販前と市販後のレギュレーションにかかわる情報の整理は十分に実施されていない. そこで本研究では, 条件付きで承認されている再生医療等製品3品目と通常承認されている再生医療等製品6品目, 条件付きで承認されている医薬品5品目と通常承認されている先駆け審査指定医薬品8品目について審査報告書などを調査し, 条件付きの承認制度に特有の有効性評価などについて解析を試みた. 条件付きの承認品目では, 市販前の臨床試験のエビデンスレベルは低い傾向にあったものの, 市販後の有効性評価および施設基準などは品目の特性に応じてきめ細かく設定されており, 通常承認品目に比して厳格化されていた. なお, これらの条件を変更するには条件付きの承認後に有効性などの検証的試験などを実施したうえで審査を受けることが必要である. 以上の結果より, 条件付きの承認制度は有効性等の検証的評価を市販後に一部移すとともに使用できる医師や施設を限定することなどで安全性を確保したうえで, 治療法のない患者に治療選択肢を提供するための合理的なレギュレーションであると考えられる.