レギュラトリーサイエンス学会誌
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特集(「医薬品リスク管理計画制度の充実と効果の向上のための基盤研究」の成果)
リスク最小化資材の整理分析と提言
林 昌洋
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2022 年 12 巻 2 号 p. 203-208

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抄録

医薬品リスク管理計画制度では,処方医の研修義務づけ,医療従事者向け資材作成,患者向け資材作成などの追加リスク最小化を講じることがある.リスク最小化資材が効果を発揮するためには,対象者に当該資材が届き,利用し,理解し,行動することが必要である.われわれの研究によると,リスク最小化資材は医療現場に十分に届けられていない可能性が考えられた.多忙な医療現場において,リスク最小化資材に記載された副作用管理に必要な検査を確実かつ効率的に実施するためには,チーム医療によるリスク管理体制構築や,電子カルテシステムを活用した実施などの組織的取り組みが必要と考えられた.このような組織的な実装への取り組みは医療現場に普及していない状況が認められた.患者向け資材は,リスク最小化のために患者自身が果たすべき役割や行動を理解しやすい構成とすべきである.必要な知識が,患者向け資材後半に記載されている,ほかの情報が大半を占めるなど,必要な情報が認識されにくい状況が認められた.潜在的なリスクに対して追加のリスク最小化が行われることがあり,追加リスク最小化の必要性について十分に説明されておらず医師,薬剤師の正しい理解につながらない可能性が考えられた.これらの課題を解決するために製薬企業,医療従事者,規制当局のステークホルダーがRMPの実装と効果の確認に関して相互理解を醸成するための取り組みが必要と考えられた.

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© 2022 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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