2023 年 13 巻 2 号 p. 125-132
希少がんは概ね人口10万人あたり6人未満の罹患率のがん種とされ,その発生は全がん種の22%にのぼるものの,それぞれの数が少ないため診療・受療上の課題が他のがん種に比べて大きく予後も悪いことが報告されている.希少がんの診療・開発上の課題と薬剤開発の方向性などの背景をふまえ,希少がんの治療開発を推進基盤として多施設共同・産学連携のMASTER KEYプロジェクトを2017年に立ちあげた.MASTER KEYプロジェクトはレジストリパートと副試験パートの2つのパートで構成され,希少がん・原発不明がん・主要がんの希少組織亜型を対象に組み入れている.本レジストリの目的である治験の対照群としてのレジストリデータの活用のための対応を行っている.レジストリ部分ではデータ品質確保の取り組みに注力しながら臨床データを蓄積し,将来的に治験の対照群としてレジストリデータが活用されるための対応を行っている.副試験部分では複数の治験が同時並行で進み,特定のバイオマーカーもしくは特定の希少疾患を対象として実施している.MASTER KEYプロジェクトの取り組みと蓄積されたデータの活用により,希少がん・希少フラクションへの治療開発を推進することが期待される.