2023 年 13 巻 2 号 p. 133-139
医薬品開発におけるReal World Data(RWD)/Real World Evidence(RWE)の利活用は,臨床試験のデザイン・計画立案(標準治療,競合品調査,選択・除外基準設定など)および臨床試験のフィージビリティ調査,並びに臨床試験の外部対照群や適応拡大を含む承認申請や添付文書の改訂といった薬事目的の利用などがある.特に小児・難病・希少疾患開発において,薬事承認への利活用の期待は高いものの,データの適切性および信頼性の観点で課題があり,これら期待の高い活用も含め外部対照群などへの利活用は進んでいない.このような状況の中,弊社では医薬品の薬事承認におけるRWE活用に関して,米国のScientific Registry of Transplant Recipients(SRTR)のレジストリデータを主たる有効性および安全性データとして,タクロリムスの肺移植の追加適応症を2021年7月に米国で取得した.レジストリデータは治験のデータと異なり,データの信頼性の観点から信頼性が担保できないデータが含まれているのが実態である.もちろん,これら不適切なデータが,有効性および安全性を評価するうえで重要なデータであれば,当該データは使用できなくなり,結果的に薬剤の評価に影響する可能性は高い.一方で,今回弊社が申請に用いたSRTRのレジストリデータは有効および安全性に関するデータの内容およびその信頼性に大きな問題はなく,U. S. Food and Drug Administration(FDA)からデータの品質に関しては許容範囲内と判断された.企業が,RWD/RWEの実態を適切に理解し,利活用するデータの適切性および信頼性の観点をふまえ,積極的かつ柔軟に活用方法を検討することが重要である.