2023 年 13 巻 2 号 p. 75-81
わが国における新薬の薬価算定の運用改善に向けた考察を行うため,近年,薬価基準に収載された新薬の類似薬の選定状況について整理・分析した.類似薬効比較方式(Ⅰ)で薬価が算定された新薬のうち8割近くの品目において,新薬と比較薬で効能・効果,薬理作用,組成・化学構造,投与形態(類似薬選定時の4つの事項)のいずれか1つ以上が異なった.これらのうち新薬と比較薬で効能・効果が異なったケースでは,対象とする症状が重複したり,効能・効果が同じ疾患群に属するといった一定の共通性が認められ,さらに,薬理作用,組成・化学構造,投与形態には強い類似性があった.また,新薬と比較薬で組成・化学構造が異なったケースでは,組成・化学構造の違いに起因して両者間で薬理作用および投与形態は異なる場合が多かったものの,効能・効果は同じであるか,または少なくとも一部は重複するものであった.近年,原価計算方式により算定された品目において価格の内訳の開示度が低いものが多く存在することに対する指摘がなされており,薬価算定の透明性・納得性を高めるという観点から,類似薬の対象を拡大する仕組みについても検討していくことが重要と考える.本研究で得られた,比較薬との類似度が相対的に低くても類似薬効比較方式により薬価が算定された品目についての情報は,今後,類似薬効比較方式の適用範囲を拡大しようとする際の議論において参考になると考えられる.