2023 年 13 巻 2 号 p. 95-106
RWDの活用は,医薬品開発の原則を適用できる領域での活用と,原則の適用が困難な希少疾病など,開発戦略の選択肢を増やすことで開発の効率化・unmet needs解消が期待できる領域での活用とに大別できるが,ここでは後者を取り上げる.本邦では2015年度の厚労科研 特別研究事業 武田班の取り組みや,厚生労働省のCIN事業の下で医薬品開発へのレジストリ活用の議論が活発化し,2021年の厚生労働省のレジストリに関する通知により薬事申請への活用の可能性が広く認識されるに至った.治験以外のデータの活用という観点でRWDの活用を捉え直すと,治験対照群への利用に限らず,今後,データパッケージの構成方針の多様化の可能性や,従来は開発・承認審査時の関与が少なかった薬剤疫学専門家などのかかわり方が変わっていく可能性がある.これらは過去の本邦や海外における薬事承認審査事例にも該当する先例はあり,決して単なる理論上の可能性には留まらない.このような,原則にもとづく開発ができない医薬品などの事例をひもときつつ,RWD活用ありきでの議論ではなく,治療開発からネグレクトされがちな領域の医薬品などをどのような戦略で開発・評価していくかという問題意識の中でRWDを取り上げるという形に議論のあり方を変え,unmet needs解消のための方策を考えていくことが喫緊の課題であろう.