レギュラトリーサイエンス学会誌
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特集(プログラム医療機器における医療データの利活用について)
データ提供側の医療機関の現状
横井 英人
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2023 年 13 巻 3 号 p. 245-254

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抄録

AI開発にはさまざまな医療情報が大量に必要となる.本稿では,日本の典型的な地方国立大学病院である香川大学病院(KUH)のデータ提供事例を紹介し,現状認識している課題を取り上げた.最も重要な課題は個人情報保護との兼ね合いである.たとえ仮名化を行ったとしても,それだけで制約がなくなるわけではない.電子カルテ(EMR)から医療情報を抽出するための当院のワークフローを紹介する.電子カルテからデータを抽出する主な目的は,診療,研究,教育の3つとなる.研究目的での抽出には倫理委員会の承認が必要である.倫理委員会の承認を得る場合には,オプトイン・オプトアウトに関するインフォームド・コンセントなどの準備が必要であり,データの保管場所や提供先などの詳細も明記する必要がある.研究計画書には,計画された研究にもとづいて抽出クライテリアが指定されており,医療情報部門は,抽出依頼のクライテリアに従ってデータを抽出し,抽出したデータの記録を保存する.当院のSaMD(Software as a Medical Device)やAI開発向けのデータ提供事例は数件存在する.データ提供は,病院の基幹電子カルテから,または部門システムから直接されることがあった.後者の場合,病院の管理部門にデータ提供の記録が残らない可能性があり,管理上の問題が残っている.レジストリ研究のためのデータ収集は,SaMDやAIの開発に有用である.われわれは地域医療ネットワーク(K-MIX R)を活用し,効率的にレジストリ調査を行っている.大量のデータを必要とする研究では,このような方法を検討する必要があると考える.

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© 2023 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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