2023 年 13 巻 3 号 p. 255-261
MDSAP(medical device single audit program)は,医療機器製造業者に対するQMS(quality management system)調査をMDSAP参加国が適当と判断した第三者調査機関に行わせ,その調査結果をそれぞれの国が活用する枠組みである.MDSAPは,国際規制調和の場で議論されたフレームワークをもとに,日本,米国,カナダ,オーストラリア,ブラジルのリーダーシップのもと,パイロットケースでの実証を経て,2017年以降社会実装されている.一方,そのアプローチは同じ医療製品である医薬品における国際規制調和の枠組みとは異なっており,医療機器の有効性および安全性にかかる国際規制に馴染みのない方には理解し難いものとなっている.そこで本稿ではMDSAPの取り組みを医薬品分野における事例と対比することで,MDSAPの特性を明らかにする.またMDSAPの成り立ちから現状に至るまでの歴史を振り返り,併せてMDSAPの全体像について紹介する.