2025 年 15 巻 2 号 p. 147-152
医薬品添加物は,有効成分の安定性や溶解性の向上,製造工程の効率化,服用性の改善などの役割を担い,医薬品の有効性・安全性を確保するうえで不可欠な成分である.しかし,医薬品サプライチェーンのグローバル化に伴い,品質管理の面で新たな課題に直面している.特に,ジエチレングリコール(DEG)およびエチレングリコール(EG)の医薬品添加物への混入による相次ぐ死亡事故は,世界的な公衆衛生上の深刻な脅威となっている.この問題に対処するため,各国薬局方におけるDEG/EG試験の導入や,世界保健機関(WHO)が提案する二段階アプローチなど,さまざまな規制対策が講じられている.医薬品添加物の品質保証と安定供給を両立するためには,規制当局,製薬企業および添加剤サプライヤー間の国際協力の強化が急務である.本稿では,日本薬局方を中心に,医薬品添加物の規制の枠組みと,薬局方調和国際会議(PDG)を通じた国際調和への取り組みについて論じる.