2026 年 16 巻 3 号 p. 241-249
医薬品の市販後における安全性評価は,承認前に十分把握されなかった安全性上の懸念を明らかにし,ベネフィット・リスクに関する最新の評価を継続的に更新するうえで不可欠である.そこで近年,市販後の安全性評価を含む規制上の意思決定において,リアルワールドデータ(RWD)を解析して得られるリアルワールドエビデンス(RWE)が活用されてきた.一方で,RWDの活用に関する各国・地域の規制当局における考え方が異なる場合,同様の安全性上の懸念に対して,調査に求められる要件が一貫しない可能性がある.そこでICH M14ガイドラインは,医薬品の安全性評価において,利用に適したRWDを用いる非介入の薬剤疫学調査の計画,デザイン,解析及び報告に関する一般原則を国際的に調和させることを目的として整理された.本稿では,本ガイドラインの目的及び適用範囲を概説し,fit-for-use,リサーチ・クエスチョンを起点とした調査計画,十分なエビデンスを創出するためのconceptual frameworkといった主要な考え方を概説する.本ガイドラインの国内実装により,RWDを活用した安全性評価の質と信頼性が高まり,エビデンスにもとづく迅速な規制上の意思決定が支援されることが期待される.