抄録
被験者保護と治験のデータの信頼性のために,医薬品医療機器総合機構(PMDA)によって,治験のgood clinical practice(GCP)適合性が調査される.我が国には,2つのGCP調査があり,一つはGCP実地調査で,他方は基準適合性書面調査である.生データと症例報告書との適合性は,選定された医療機関でのGCP実地調査により評価される.基軸となる臨床試験では,症例報告書と承認申請書との信頼性と基準適合性が,基準適合性書面調査で確認される.2010年度から2012年度に承認された新医療用医薬品の審査報告書を調査することで,GCPの遵守状況の推移を検討した.GCP実地調査では,いくつかの医療機関でGCP不適合な症例が認められ,PMDAは,申請者にこれらの症例を有効性評価から削除し,申請資料を改訂するなど指導した.2010,2011,2012年度でのこれらのケースの頻度は,それぞれ,3.0%,2.6%,2.7%であった.基準適合性書面調査では,PMDAは申請者に,申請時の申請資料を修正するように求めていた.これらのケースの頻度は,2010,2011,2012年度でそれぞれ0.0%,2.5%,1.3%あった.修正された承認申請資料は,承認審査に受け入れられたことがわかった.治験の質は高く,また,新薬の承認審査のために十分であった.我が国においては,被験者の保護を確保しながら,適切な治療を必要としている患者のための有望な新薬を開発することが重要である.