レギュラトリーサイエンス学会誌
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4 巻, 3 号
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原著
  • 西村(鈴木) 多美子, 北条 瑠巳
    2014 年 4 巻 3 号 p. 189-198
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/15
    ジャーナル フリー
    被験者保護と治験のデータの信頼性のために,医薬品医療機器総合機構(PMDA)によって,治験のgood clinical practice(GCP)適合性が調査される.我が国には,2つのGCP調査があり,一つはGCP実地調査で,他方は基準適合性書面調査である.生データと症例報告書との適合性は,選定された医療機関でのGCP実地調査により評価される.基軸となる臨床試験では,症例報告書と承認申請書との信頼性と基準適合性が,基準適合性書面調査で確認される.2010年度から2012年度に承認された新医療用医薬品の審査報告書を調査することで,GCPの遵守状況の推移を検討した.GCP実地調査では,いくつかの医療機関でGCP不適合な症例が認められ,PMDAは,申請者にこれらの症例を有効性評価から削除し,申請資料を改訂するなど指導した.2010,2011,2012年度でのこれらのケースの頻度は,それぞれ,3.0%,2.6%,2.7%であった.基準適合性書面調査では,PMDAは申請者に,申請時の申請資料を修正するように求めていた.これらのケースの頻度は,2010,2011,2012年度でそれぞれ0.0%,2.5%,1.3%あった.修正された承認申請資料は,承認審査に受け入れられたことがわかった.治験の質は高く,また,新薬の承認審査のために十分であった.我が国においては,被験者の保護を確保しながら,適切な治療を必要としている患者のための有望な新薬を開発することが重要である.
  • 成川 衛
    2014 年 4 巻 3 号 p. 199-206
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    我が国で従来行われてきたいわゆる「全例調査」(医薬品を使用した全症例を対象とした使用成績調査)について,その実施状況や問題点を包括的に把握するべく,製薬企業に対するアンケート調査を実施した.これまで全例調査が実施された132の医薬品において,調査の背景・目的として「国内での治験症例数が少ない/ない」を挙げたものが9割近くを占め,薬効分野別では全身用抗感染薬,抗悪性腫瘍薬・免疫調節薬が全体の6割以上を占めた.予定症例数があらかじめ定められていた調査は全体の約半数であり,実際の症例数が予定の症例数を大きく上回る調査が多く認められた.全例調査の意義として「安全性情報の確実な把握」を挙げたものが最も多く,「医師等に適正使用のための情報提供等が確実に行える」,「投与患者の適格性の確認等が慎重に行える」などリスク最小化の観点からの意義を挙げる回答もみられた.調査の運用に関しては,調査票の簡素化等を求める意見,全例調査の終了の基準や手続きの明確化を求める意見が多く得られた.
特集(薬事法改正等)
シリーズ(医薬品・医療機器評価をめぐる最近の話題)
  • 斎藤 嘉朗, 前川 京子, 大野 泰雄
    2014 年 4 巻 3 号 p. 249-255
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    医薬品開発における薬物相互作用の評価は,臨床試験における副作用の低減と市販後の適正使用確保のために重要である.本邦の現指針は,発出後,既に10年以上が経過し,薬物相互作用に関する多くの科学的知見や臨床経験が蓄積した.また欧米も新しいガイドライン又はガイダンス案を発表している.そこで本邦でも平成24年12月より,産学官の専門家で構成される研究班により,新ガイドライン案の検討が開始され,パブリックコメントを経て,平成26年5月に最終案をまとめ,厚生労働省に報告し公表された.新指針案では,最新の情報に基づき,また欧米の指針との調和についても配慮しつつ,全面的に改定し,詳細な記述を加えた.以下は新たな内容であり,特記される.1)トランスポーターに関する記載追加,2)決定樹による必要試験の明確化,3)薬物動態モデルとシミュレーションによる評価に関する記載追加,4)シトクロムP450の主要分子種における阻害薬・誘導薬の強度分類と相互作用を受けやすい基質薬に関する記載,5)生物薬品との相互作用に関する記述の追記,7)添付文書への反映に関する方法の記載.本稿では,上記の内容を中心に,新指針案について概説する.
資料
  • 福田 治久
    2014 年 4 巻 3 号 p. 257-264
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    背景:医療材料を対象にした費用効果評価を実施する上で,レセプトデータの活用が重要になると考えられるが,医療材料において採用されている機能区分別保険償還価格制度は,レセプトデータ分析を阻害している.
    目的:特定保険医療材料を対象にしたレセプトデータ分析の実施可能性について検討することである.
    方法:2002年4月から2013年2月の間にC区分及びB区分として保険適用が承認された特定保険医療材料の保険適用開始年月日及び製品名に関する書類を収集し,ある機能区分においてC区分製品が保険適用されてから同一機能区分においてB区分製品が保険適用されるまでの期間(ソロ期間)を算出した.また,ソロ期間と医療材料の種別との関連性を検証し,医療材料を対象にしたレセプトデータ分析の実施可能性の高い領域を明らかにする.
    結果:合計で735件の機能区分が認められた.そのうち,C区分が新たに保険適用されていたものが139件(18.9%)であった.ソロ期間の中央値(四分位範囲)は16(5-31)ヶ月であった.139件のうち,C区分適用承認後にB区分が保険適用されていたものは67件(48.2%)であった.ソロ期間が6ヶ月以下のC区分製品は23件あり,全体の34.3%を占めていた.新製品の上市後2年で,71.6%の医療材料はレセプトデータから抽出できなくなることが明らかになった.医療材料類別とソロ期間の間に関連性は認められなかった.
    結論:機能区分別償還価格制度により,レセプトデータを活用して銘柄別の特定保険医療材料の使用状況を把握することは大きく阻害されていた.
ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)の報告
  • 廣瀬 智栄子, 中島 宣雅
    2014 年 4 巻 3 号 p. 265-271
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/02/04
    ジャーナル フリー
    ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)は,規制当局と製薬企業の代表者が科学的及び技術的観点から協議を行ない,新薬承認審査の基準を国際的に統一することを目指して平成2年4月に設立された.ICH発足以来,新医薬品の品質・有効性・安全性の評価にかかわる技術的なガイドライン,承認申請資料の形式など,約80のガイドラインが合意(調和)されており,国際障壁の軽減,重複試験と研究開発資源の削減のみならず,ICHに参加していない地域との交流や情報の共有化においても大きな成果をあげてきた.近年,医薬品の開発,製造,流通を取り巻く環境は,日米欧三極からグローバルなものへと変化し,医薬品規制における急激な変化により世界的な協力の必要性が問われるようになってきている.そのため,国際調和の代表的な仕組みである上述のICHも変革期を迎えている.現在,ICHはリフォームと再活性化のための取り組みを推進している.ICHリフォームでは,加盟国の拡大など組織改革を,再活性化においては,前回会合にみられるような8項目の新規トピックの採択である.ICHのアウトリーチ活動も促進し,Globalな取り組みへの変換を図り,非ICH国へのトレーニングの提供にも取り組んでいる.
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