2016 年 6 巻 3 号 p. 345-353
医薬品の承認申請に際し, 日本でもそのリスク管理計画 (Risk Management Plan : RMP) の策定と提出, そして公開の仕組みが整備されて2年ほどが経過した. RMPが適切に機能するならば, 仮に「極めて有効で, 極めて副作用リスクが心配」な物質であっても, 机上の論理ではその「極めて有効」な物質が, 病気に苦しむ患者さんに医薬品として届けられるチャンスが広がることになる. すなわち, RMPに含まれるリスク最小化計画が奏効し, 重篤な副作用発現は最小限にセーブされ, 一方でリスク監視計画の実行により承認時には気づけなかった新たな知見を適時に的確に炙り出すことができる. リスク最小化計画はこの知見を盛り込みさらに向上する, という訳だ. しかしながらRMPはまだ2年生, 3年生といったところであり, こうした机上の理想論とははなはだ大きな開きがある. 薬剤疫学的視点の導入はこの開きを改善する最重要ファクターであろう. 産業界としても真摯にこれを学び修得することで, より多くの医療貢献, 患者さんの命への貢献を実現することができる.