1983 年 22 巻 1 号 p. 20-24
この報文は,空気中の鉄屑の白然発熱反応の初期過程に関する基礎的な知見を得ることを目的としている、通気した塩化ナトリウム水溶液中の軟鉄の反応速度を酸素消費速度により追跡した. 反応速度は,活性化過程に平行して時間と共に増加し,ある定常値に達する.活性化状態において,反応速度は酸素拡散律速であることを見い出した.活性化過程は,温度および塩化ナトリウム濃度の増加にともない加速される.実験データに基づき,塩化ナトリウム濃度と温度の関数として,活性・不活性の領 域図を作成した. 数十時間の反応に限っては,温度30℃以下,塩化ナトリウム濃度0.01wt%以下であれば,鉄は不活性である.一方,温度40℃以上,塩化ナトリウム濃度1wt%以上の環境中では,鉄の活性化は容易 に引き起こされる, 実験の解析により得られた知見をもとに,空気中の鉄の自然発熱反応に対する抑制手段を提案した.