1993 年 32 巻 4 号 p. 242-247
最近,水銀による地球規模の環境汚染が話題となっている.水銀汚染を議論する場合,環境の汚染レベルの指標として有効である頭髪中の水銀含有量が用いられる.しかし,環境汚染の比較対照の基準値として,30年以上前の調査データに基づいた平均水銀濃度6.02ppmが用いられている.本研究は金アマルガム分析法によって,人の集団における頭髪中の水銀濃度を測定し,現在のわが国の一般住民の標準レベル値を算出するとともに・頭髪中の水銀濃度と疾病との関係を考察した.その結果,関東地方の日本人256人の健康人の頭髪中の平均水銀濃度は2.49ppmであった.また,57名の痴呆患者の頭髪中 の水銀濃度は同年齢層の健康人の約3倍量であった.