抄録
近年,複数の顧客・企業間におけるサプライチェーンの形成に関する研究が必要とされており,適切な取引先を逐次組み替える動的サプライチェーン(Dynamic Supply Chain,以下ではDSCと呼ぶ)の研究が行われている.DSCでは,サプライヤの利益を最大化するとともに,クライアントの顧客満足度を最大化する適切な契約手法が必要である.本研究では,納期に対するクライアントの要求の度合いとサプライヤの生産性をリアルタイムに考慮した適切な価格の決定手法を提案する.まず,受注型生産を対象として,クライアントとサプライヤの交渉により,生産スケジュールを考慮して価格を決定する価格モデルを提案する.次に,生産スケジュールの変更およびクライアントとサプライヤ間の交渉の繰返しにより,納期と価格を決定するプロセスを提案する.さらに,複数のクライアントとサプライヤによるDSCシミュレーションシステムのプロトタイプを開発し,簡単な例を用いて,本手法の有効性を検証する.