抄録
従来、最適化に対する研究は、最適化理論や最適化手法に関するものが中心となっており、その前提や結果の解釈と関わるところにはほとんど関心が払われてこなかったといえる。換言すれば、「いかに問題を解くか」については数多くの研究がなされているが、「いかに問題を定式化するか」や「いかに結果の解釈を支援するか」についての研究は広く行われていない。しかし、最適化が工学と関わる現実の問題解決に単に概念やガイドラインとしてだけにとどまらず、実際の意思決定に役立つためには、上述の周辺問題への取り組みが不可欠である。ところで、最適化から距離をおき、関連する周辺を眺めてみれば次のような現状に気付く。計算機科学を支える要素技術はハード面、ソフト面のいずれにおいても半世紀の歳月を越えて今なお目著しい発展をとげている。しかしソフト面でのこうした技術は多くの場合それぞれが独立して使われてきている。これらの中には、システム工学的に有機的に組合せて適用することで決まりきった形を持たない(悪定義な)最適化周辺の問題解決に有効となるものが少なくない。本報告では、こうした要素技術を駆使して、最適化問題の定式化のための手順と方法論を与える。