抄録
近年のディジタル機器の発達により,携帯電話や携帯ゲーム機等の小型機器でも良質の音楽を奏でることが可能となっている.その際,楽器の音源をディジタル機器に実装することが必要となるが,現在主流であるPCM音源では,録音した楽器音を保存しなくてはならず,大きな記憶領域が必要となる.これに対し,楽器音をある線形システムのインパルス応答とみなし,そのシステムのパラメータを同定することにより,非常に小規模な音源を得ることが可能となることが近年示された.しかし,その手法ではすべての音階の音を同定する必要がある.そこで本研究では,ある音階の音源から別の音階を生成する新しい手法を提案する.提案手法は,サンプル値制御理論を用い,アナログ特性を考慮して設計された非整数遅延フィルタを用いて,サンプル点間の信号を推定し,それを用いて異なる周波数の信号を生成する方法であり,少ない計算量で変調が実行できるのが特徴である.