抄録
音響データを用いた良否判定検査の精度および効率を向上させるため,現在は人間の耳に頼っている検査の自動化が要求されている.その際に必要とされるのは,検査データに含まれている複雑な雑音を除去して所望信号のみを抽出する技術である.本論文では,適応フィルタを雑音除去の従来手法とし,それをベースとした改良手法を提案する.実験では検査データとして紙幣がバンクマシンを通過する際に発生する音響信号を用意し,それに含まれている不要な信号の除去を行った.提案手法の概略としては,検査データを複数の信号成分に分割した後,各成分に適したフィルタリングを行うというものである.雑音に関しては,ローラやモータの稼動音などの周期的成分と,突発的に混入する非周期的成分を想定し,適応フィルタと階層型ニューラルネットワークを組み合わせた処理を施した.数種類のフィルタ構成および学習アルゴリズムを試行し,提案手法の有効性を検証した結果,従来手法と比較して優れた雑音除去を実行可能であることが確認された.