2025 年 32 巻 7 号 p. 20-32
楽器の演奏には、手、首、肩、体幹の安定性が必要であり、等張性および等尺性の動作や筋持久力、その他様々な身体的要求が伴う。音楽家、特にプロや教育目的の音楽活動をしている人々は、練習や演奏に毎日数時間を費やすことが多い。音楽の演奏に伴う身体的要求はかなり大きいにもかかわらず、パフォーマンスアート(舞台芸術)の医学領域においては、楽器奏者のコンディショニング要求に適切に対処するための包括的な研究や実践的な方法論が不足している。プロの楽器奏者の間では、筋骨格系の不快感が広くみられ、主に上半身に影響を及ぼしている。楽器奏者は、筋骨格系のオーバーユース、神経絞扼、局所性ジストニア、その他の演奏に関連のある筋骨格系障害に見舞われ、それらが長期間持続する可能性がある。そのため本稿の目的は、大規模な音楽アンサンブル、特に交響楽団や吹奏楽団で活動する楽器奏者のために、特別に調整されたストレングス&コンディショニング(S&C)処方を紹介することである。この手引きでは、これら楽器の演奏に固有の力学と、それらに関連する一般的な傷害を明らかにする。その情報を用いて、交響楽団や吹奏楽団の音楽室での利用に適したS&Cプロトコルを提案する。