2022 年 21 巻 p. 89-113
過去の研究によって,母国語話者は環境から得られる言語インプットの統計的特質に迅速に適応することが知られている.この適応による学習は,「予測エラー」と呼ばれる特定の言語情報に対する予測と実際のインプットとの差異に因るものだと考えられている.実際過去の研究によって,予測エラーに基づく学習が,第一言語習得および使用において重要な役割を担っていることが示されている.しかし,この学習モデルが第二言語習得においても有効であるかどうかは未だ明らかではない.本研究は,日本人英語学習者を対象として第二言語の学習における予測エラーの役割について検証を行った.一時的な構造的曖昧性を含む縮約関係節文と,非曖昧な非縮約関係節文の読みにおける眼球運動を測定した結果,構造の曖昧性に起因する予測エラーが第二言語習得において決定的な役割を担っていることが明らかになった.