Second Language
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寄稿 シンポジウム2:第24回 国際年次大会 (J-SLA 2024)
第二言語語彙習得研究:現状と将来の展望
中田 達也
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2025 年 24 巻 p. 102-109

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抄録

本論文では, 第二言語(L2)の語彙習得に関する研究の現状を概観し, 今後の研究の可能性について論じる.具体的には, (1) 語彙習得研究におけるモデルの不在, (2) 語彙習得の定義, (3) 単語の習得 vs. 定型表現の習得という3点に関する問題を取り上げる.第1に, Meara (1997) は, L2語彙習得研究は“remarkably model-free” (p. 111)であり, これが語彙学習プロセスの理解を妨げていると指摘した.この分野でどのような進展があったかを議論する.さらに, 認知心理学など他分野の知見(例:検索効果, 分散学習効果)をL2語彙学習に応用した研究の意義と課題について論じる.第2に, 「語彙を習得するとはどういうことか」という点について検討する.語彙知識には, 少なくとも「サイズ」と「深さ」という側面がある.サイズとは, 「学習者はいくつの単語を知っているか?」という量的な側面であり, 深さとは, 「ある単語について学習者はどのような知識を持っているか?」という質的な側面である.これまでの研究の多くは, 語彙習得を初期の形式・意味のマッピングと定義し, 深さを無視してきた.しかし, 過去20年間で, 語彙知識の深さの学習に影響を与える要因を調べる試みがなされてきた.近年では, プライミングや視線計測などの手法を用いて, 宣言的のみならず非宣言的な語彙知識の測定に関する研究も行われている.第3に, 語彙習得研究の多くは単語の習得に焦点を当てていたが, 近年の研究により, 複数の単語から構成される定型表現(例:イディオム, コロケーション, 句動詞)が, L2の習得・処理・使用において重要な役割を果たしていることが示されている.定型表現の習得に関する研究の重要性と, その課題について議論する.

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© 2025 日本第二言語習得学会
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