Second Language
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第二言語のテキスト理解要因としての背景知識と語彙知識
柴崎 秀子
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2005 年 4 巻 p. 51-70

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抄録
本研究の目的は, 第二言語の科学的なテキスト理解における読み手の語彙知識と背景知識の影響を明らかにすることである.実験1では175名の日本人大学生と高校生を被験者に, 一般的な英語力を測定するためのクローズテスト, テキスト内の語彙知識を測定するためのテスト, テキストの内容に関しての知識を測定するための背景知識テストを行った.次に, 被験者は心臓と血液循環に関する英文のテキストを読み, その後, テキストベースの理解を測定するためにテキスト課題と, 状況モデル (van Dijk &Kintsch, 1983) の構築を測定するために推論課題を行った.パス解析の結果, 語彙知識はテキストベースの予測変数であり, 背景知識は状況モデルの予測変数であることが示された.また, テキストベースと状況モデルの間に強い因果関係があることも示された.実験2では, 語彙知識テストによって分けられた高知識群 (37名) と低知識群 (45名) が実験1と同じテキストを読み, テキスト課題推論課題再生テスト, テキストの要約, の4つの課題を行った.その結果, 再生テストとテキスト課題において, 高知識群は低知識群よりも良い成績で有意な差が示された.しかし, 推論課題と要約の成績においては, 有意な差は示されなかった.実験3では, 背景知識テストによって分けられた高知識群 (34名) と低知識群 (36名) が実験2と同じ手順でテストを行った.その結果, テキスト課題, 推論課題, 要約において, 高知識群は低知識群よりも良い成績を示し, 有意な差が示されたが, 再生テストにおいては有意な差は示されなかった.実験2の結果から, 語彙知識はミクロ命題の量を増やすことに貢献するが, マクロ命題の構築には効果が低いことが示唆された.またこれと対照的に, 実験3の結果から, 背景知識はミクロ命題の増大には効果が低いにも関わらず, マクロ命題の構築に貢献し, その結果, テキストベースと状況モデルの質を高めることが示唆された.
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© 日本第二言語習得学会
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