環境科学会誌
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アジア型経済発展による環境汚染の長期化(中国雲南省・〓池)
濱口 航岡本 勝男新藤 純子川島 博之
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2008 年 21 巻 2 号 p. 143-152

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抄録

 中国雲南省〓池の窒素汚染から,アジア型経済発展が環境に与える影響を分析した。アジア型経済発展の特徴として,(1)短期間での動物性タンパク摂取量増加,(2)都市への人口集中を挙げることができる。本研究では〓池における1950年から2000年にかけての窒素濃度上昇要因を分析し,その結果から今後の窒素濃度を予測した。「人口」,「食物消費量」,「窒素肥料使用量」,「家畜頭数」などから〓池に流入する窒素負荷を算出し,その負荷より〓池の窒素濃度を算出した。〓池の水質汚染は農耕地への化学肥料投入,畜産からの負荷の増大,周辺への人口集中により生じた。対策として1980年代後半より工場排水への規制,1990年初頭から下水整備が行われたが,流入負荷量の増大は削減対策を上回った。〓池周辺では食料の摂取より生じる一人当たりの負荷が横ばいになった後も人口集中が続いており,現状のままではさらなる水質悪化が予測される。下水道普及と窒素肥料の使用効率向上のみでは〓池の水質を大幅に改善させることは難しい。〓池の水質を回復させるためには,技術的対策に加え周辺への人口流入を抑制することが重要である。

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