日本顎口腔機能学会雑誌
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原著論文
ヒトの咀嚼経路の個人内,個人間変動
村上 任尚岩松 正明佐藤 智昭服部 佳功
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2013 年 20 巻 1 号 p. 12-21

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抄録
ヒトの咀嚼経路には大きな個人内,個人間変動を認める.本研究の目的は,咀嚼経路の個人内変動における特徴を明らかにするとともに,その特徴について個人間での類似性の有無を検討することにある.健常成人男子12名において右側片側ガム咀嚼時の下顎切歯点の咀嚼経路を記録した.各咀嚼周期の開口相と閉口相それぞれに所要時間を20等分する計41の計測時点を設け,各時点の下顎切歯点の3次元座標,計123変数により,その周期の咀嚼運動経路を記述した.各被験者について記録が古い順に選んだ200周期の咀嚼経路をこの方法で記述して分散共分散行列に基づく主成分分析に供した.各主成分が咀嚼経路に及ぼす影響は,固有ベクトル行列の逆行列を用いて経路の再構成を行って視覚化した.その結果,いずれの被験者においても第1主成分は経路の大きさの変化に関連し,スクリープロットにより選ばれたその他の主成分には前頭面ならびに矢状面内における開口方向,開閉口路間の幅径の変動に関与するものが含まれた.上述4主成分の寄与率の合計は,各被験者で74~87%に及んだ.さらに全被験者の咀嚼経路を合わせた計2,400周期について同様の解析を行ったところ,選ばれた7主成分中の4主成分は,先述した4種の主成分と経路への影響が定性的に類似し,その寄与率の合計は84%であった.上述の知見は,咀嚼経路の著しい個人差にも関わらず,咀嚼経路の調節機序が個人間で共有される可能性を示唆するものと考えられた.
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© 2013 日本顎口腔機能学会
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