抄録
本研究の目的は,味覚機能検査の全口腔法とVisual Analogue Scale(以下,VASと略す)を併用し,全ての被験者が認知し得る最低濃度を基本味ごとに1種類選定することにより,1味質につき1種類のみの検査液を応用した,4基本味における味覚機能スクリーニング検査法を構築することである.
実験1では,被験者として健常有歯顎者84名を選択し,すべての被験者が認知し得る最低濃度を基本味ごとに1種類選定するための検査濃度設定について検討を行った.また,その時に感じた味の強さに関してはVASによりスコア化し(以下,味覚VAS値と略す),平均値を算出した.
実験2では,被験者として実験1で選択した被験者の中から4名を無作為に抽出し,4基本味における日内変動および日間変動について検討を行った.
実験3では,被験者として健常有歯顎者25名を選択し,実験1で求めた濃度の検査液を用いて味覚機能検査を実施し,本研究の味覚機能スクリーニング検査法としての可能性について検討を行った.その結果,全員が味を認識できた最低濃度は,甘味0.075 M,塩味0.2 M,酸味2.0×10-3M,苦味7.5×10-5Mとなり,すべての被験者が認知し得る最低濃度を基本味ごとに1種類選定し得ることが示された.また,本研究の味覚機能スクリーニング検査法を用いることにより,被験者25人中7人(28%)に味覚障害が認められた.以上より,全口腔法にVASを併用した本法が若年者における味覚機能のスクリーニング検査法として有用となる可能性が示唆された.