日本顎口腔機能学会雑誌
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20 巻, 2 号
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特別講演
  • 大坪 研一
    2014 年20 巻2 号 p. 97-105
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    米の消費拡大を目的として,米粉および米粉利用食品の機能性に関する研究を行った.新形質米を中心に,米粉パン,米粉麺,発芽玄米など,各種の機能性米加工食品の開発に取り組んだ.高アミロース米や超硬質米は,食後血糖上昇を抑制する効果が認められた.米加工品の原料米の品種をPCR法で判別するために,鋳型DNAの調製方法として,酵素法およびその改良法を開発し,試料が米菓や米粉パンなどの場合においても,PCRによる原料米および混入異種穀類の判別を可能にした.
原著論文
  • 畠山 文, 中村 由紀, 真柄 仁, 辻村 恭憲, 谷口 裕重, 堀 一浩, 井上 誠
    2014 年20 巻2 号 p. 106-114
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    味覚刺激が嚥下運動にどのような変化を与えるかについて調べることを目的として,異なる濃度の塩味またはうま味溶液を口腔内に微量注入した時の随意性嚥下運動を記録した.健常成人29名を対象として,出来るだけ早く繰り返し嚥下するよう指示し,その際に咽頭または口腔への溶液刺激(0.2mL/min)を与えた.咽頭への溶液刺激は蒸留水または0.3 M NaCl溶液とし,口腔への溶液刺激は蒸留水または3種類のNaイオン濃度(6 mM,40 mM,240 mM)のうま味溶液(モル濃度比2対1のグルタミン酸ナトリウムとイノシン酸ナトリウム混合溶液),うま味溶液と同濃度のNaイオンを含むNaCl溶液とした.測定開始後4から9回目までの各嚥下間の平均時間を嚥下間隔時間として各条件間で比較した.NaCl溶液,蒸留水いずれの咽頭刺激においても嚥下間隔時間の顕著な個人差が認められた.NaCl溶液刺激時の嚥下間隔時間は蒸留水よりも有意に長く,咽頭の水受容器による嚥下反射誘発促進効果,NaCl溶液による水受容器応答の抑制が確認された.さらにNaCl溶液刺激時の嚥下間隔時間が長い被験者ほど蒸留水刺激による随意性嚥下の促進効果が高かった.一方,口腔への溶液刺激では,うま味溶液刺激時のみ蒸留水に対して有意な短縮を認めた.随意性嚥下能力の高い順から上位群,中位群,下位群ごとに嚥下間隔時間の変化を調べたところ,上位群,下位群では各溶液の濃度の違いによる有意な差は認められなかったのに対して,中位群のみ溶液濃度が高くなるに従って嚥下間隔時間の短縮を認めた.以上の結果は,中位群におけるうま味成分がもつ随意性嚥下への促進効果を示唆するものである.随意性嚥下誘発能力の個人差をもとに,末梢入力に対する嚥下運動誘発の時間間隔を比較したところ,咽頭刺激時とは異なっていたことから,口腔への味覚刺激がもつ嚥下中枢への効果は単なる加重効果として捉えられず,その効果の作用機序の理解に向けてはさらなる議論が必要である.
  • 豊田 有美子, 奥津 史子, 松川 高明, 草野 寿之, 根来 理沙, 濵坂 弘毅, 眞木 信太郎, 遠藤 舞, 松井 藍有美 ...
    2014 年20 巻2 号 p. 115-129
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,味覚機能検査の全口腔法とVisual Analogue Scale(以下,VASと略す)を併用し,全ての被験者が認知し得る最低濃度を基本味ごとに1種類選定することにより,1味質につき1種類のみの検査液を応用した,4基本味における味覚機能スクリーニング検査法を構築することである.
     実験1では,被験者として健常有歯顎者84名を選択し,すべての被験者が認知し得る最低濃度を基本味ごとに1種類選定するための検査濃度設定について検討を行った.また,その時に感じた味の強さに関してはVASによりスコア化し(以下,味覚VAS値と略す),平均値を算出した.
     実験2では,被験者として実験1で選択した被験者の中から4名を無作為に抽出し,4基本味における日内変動および日間変動について検討を行った.
     実験3では,被験者として健常有歯顎者25名を選択し,実験1で求めた濃度の検査液を用いて味覚機能検査を実施し,本研究の味覚機能スクリーニング検査法としての可能性について検討を行った.その結果,全員が味を認識できた最低濃度は,甘味0.075 M,塩味0.2 M,酸味2.0×10-3M,苦味7.5×10-5Mとなり,すべての被験者が認知し得る最低濃度を基本味ごとに1種類選定し得ることが示された.また,本研究の味覚機能スクリーニング検査法を用いることにより,被験者25人中7人(28%)に味覚障害が認められた.以上より,全口腔法にVASを併用した本法が若年者における味覚機能のスクリーニング検査法として有用となる可能性が示唆された.
第51回学術大会抄録
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