日本顎口腔機能学会雑誌
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学術大会抄録
ラット閉口筋および開口筋運動ニューロンにおける抑制性シナプス伝達の生後発達変化
野口 毅中村 史朗中山 希世美望月 文子壇辻 昌典井上 富雄
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2022 年 29 巻 1 号 p. 18-19

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抄録

I.目的

哺乳動物は生後初期,吸啜によって栄養を得るが,その後固形物の咀嚼へとシフトする.この時期には,末梢の感覚受容器,咀嚼筋,骨格等の口腔諸器官の発達とともに顎運動制御に関与する中枢神経機構も大きく変化すると考えられているが,その発達メカニズムは不明な点が多い.

吸啜および咀嚼の基本的な顎運動パターンは,脳幹に存在するパターンジェネレーターで形成され,プレモーターニューロンを介して三叉神経運動ニューロンへと伝えられる.これらの入力は三叉神経運動ニューロンで最終的な運動指令となり咀嚼筋へと伝達される1).閉口筋および開口筋を支配する三叉神経運動ニューロンは,グルタミン酸を介した興奮性の入力とGABAおよびグリシンを介した抑制性入力を受ける.この抑制性シナプス入力は,顎運動の制御において重要な役割を果たしている2).先行研究では,閉口筋および開口筋運動ニューロンにGABA性およびグリシン性の抑制性シナプス後電流が誘発され,これらの性質が生後7日齢を境に大きく変化することが報告されている3, 4).しかし,閉口筋および開口筋運動ニューロンへの抑制性シナプス伝達が生後どのように変化するのか,またその発達様式が運動ニューロン間で異なるのか,未だ不明である.

本研究は,生後2〜17日齢の幼若期ラットを用いて,閉口筋および開口筋運動ニューロンに誘発されるシナプス後電流をシナプス伝達様式の指標として記録し,抑制性シナプス伝達の生後発達変化を解析した.

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© 2022 日本顎口腔機能学会
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