I.目的
加齢や種々の疾患に伴う唾液分泌の低下は咀嚼・嚥下運動を困難にさせる.一方,食品成分や物性もまた唾液分泌や咀嚼嚥下運動を変化させる要因である.近年パン等の小麦粉製品による窒息事故の報告が散見されるが,パン摂取時に口腔乾燥をはじめとする口腔環境や,個々の食品物性の違いが摂食嚥下動態に与える影響は明らかではない.本研究では,唾液分泌低下がもたらすパン咀嚼嚥下運動への影響を検討するために,種々のパンとスプレッド(マーガリン)を用いて,硫酸アトロピン内服前後におけるパン摂取時の官能評価及び生体記録を行った.